メディカルジャーナリズム勉強会、 ソーシャルネットワークを活用した「ワクチン」関連の医療情報引用の実態を調査

~第11回日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会にてポスター発表~

  • 日本語で発信された「ワクチン」をテーマとした医療系コンテンツ(医療記事等)のTwitterおよびFacebookにおける「エンゲージメント*1」と、コンテンツの「質*2」に関する相関性を調査
  • 現状、TwitterおよびFacebook上では、ワクチン接種を勧めるコンテンツに対する「エンゲージメント*1」が高い
  • Twitterでは「質*2」が高いコンテンツの「エンゲージメント*1」が高く、Facebookでは「質*2」の低いコンテンツの「エンゲージメント*1」が高い
 

一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会(代表:市川 衛)は、ソーシャルネットワークを活用した「ワクチン」関連の医療情報引用の実態に関する調査を実施しました。本調査内容は、2019年9月21日~22日に開催された第11回日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会にて、ポスター発表されました。
本調査内容および結果は、以下の通りです。

【調査背景・目的】

SNS上ではいわゆる「フェイクニュース」の方が拡散しやすいことが指摘されており、先行研究では、Twitterで投稿される情報は話題の中身にかかわらず、「不正確」な情報の方が、「正確」よりも有意に速く、広く、深く広がりやすいことが示され、また、Facebookでも同様の傾向がみられている。
メディカルジャーナリズム勉強会では、SNS上で注目を集めている「ワクチン」関連の医療系コンテンツの実態調査を行うため、日本語で発信されたワクチンをテーマとした医療コンテンツ(医療記事等)のTwitterおよびFacebookにおけるエンゲージメントと記事の質に関する相関性を探索した。

【結語】

・現状TwitterおよびFacebookでは、ワクチン接種を勧めるコンテンツがより多く拡散されている。
拡散されやすいコンテンツの「質*2」についてはプラットフォームで異なる傾向がみられた。
・この要素は今後、国内のSNSでの医療健康情の質を検討する際に考慮すべき点かもしれない。

1:エンゲージメント:Twitter いいね/リツイート+Facebook いいね/シェアを示す。
2:質:メディアドクター研究会の開発したメディアドクター指標(Review Criteria of Media Doctor Japan ver4.0, 2018)を利用し、「本指標の点数=コンテンツの質(点数が高ければ質が高い)」とした。

ワクチン関連医療系コンテンツ エンゲージメントTOP50

*BuzzSumo(https://buzzsumo.com/)を使用し、抽出したワクチン関連ワードをタイトルに含む医療記事等の医療系コンテンツのエンゲージメントTOP50
・期間:2018年6月29日~2019年6月27日
・エンゲージメント:Twitter いいね/リツイート+Facebook いいね/シェア
・言語:日本語

【調査手法】

1.「ワクチン」と関連して言及されやすいキーワードとして、国内で定期予防接種対象となっている病気およびDavid A. Broniatowskiら(2018)の先行研究から抽出した。
2.TwitterおよびFacebookデータ抽出サービスBuzzSumo(https://buzzsumo.com/)を使用し、抽出したワードをタイトルに含む医療記事など医療系コンテンツの タイトル、URLおよびエンゲージメントデータをCSV形式にて取得した。(期間:2018年6月29日~2019年6月27日、言語:日本語、エンゲージメント:Twitter いいね/リツイート+Facebook いいね/シェア)。
3.取得したコンテンツのうち、①重複しているもの、②既に閲覧できないもの、③ログインしないと閲覧できないもの、④コンテンツ内に「ワクチン」という文言が1つも記載されていないものを除外しリスト化した。
4.リスト化したエンゲージメント上位50コンテンツについて、当会メンバーが以下の2つについて審議・判定を行った。
各コンテンツのワクチンに対するスタンスの判定
独立した2名の判定者が、各コンテンツを閲覧し、先行研究の基準をもとにワクチンに対して「ANTI-VACCINE(反対)」「PRO-VACCINE(肯定)」「NEUTRAL(それ以外)」のスタンスを判定した。
各コンテンツの「質」の判定
独立した5名の判定者が医療コンテンツの「質」を判定した。判定にはメディアドクター研究会の開発したメディアドクター指標(Review Criteria of Media Doctor Japan ver4.0, 2018)を利用し、「本指標の点数=コンテンツの質(点数が高ければ質が高い)」とした。
各コンテンツの「エンゲージメント」「質」および「スタンス」の関係を相関分析、および多変量回帰分析により調べた。

【調査結果】

トータルエンゲージメントと質の相関
a) Facebookでは、コンテンツのエンゲージメント数と質は負の相関を示した(P=0.01~0.03)。
b) Twitterでは正の相関の傾向があった。この傾向は、外れ値(エンゲージメント8000以上)を除くと有意になった(P=0.01~0.03)。
c) FacebookとTwitterのエンゲージメントを合算した場合(Total)、相関性は認められなかった。

5者のメディアドクター指標による評価値の級内相関係数(ICC)は0.57のため、5者の評価を反復測定して表記した。2者の評価者間でワクチンに対するスタンスをすり合わせ、PROは青、NEUTRALは茶、ANTIを赤で示した。(スタンスとエンゲージメントを互いに調整した多変量回帰分析により描写・灰色は95%信頼区間)

2.スタンスによるエンゲージメントと質の相関(多変量回帰分析による)
a) スタンスとメディアドクター指標による評価は正の相関となった(p<0.001)。
b) a)におけるスタンス-1/-0.5をStance-、0.5をStance+、1をStance++として中立Stance(Neutral)と比較 した質に対する効果量、およびFacebookとTwitterのエンゲージメントの質に対する効果量とを推定した(お互いに補正)。

スタンスおよびFacebookのエンゲージメントにのみ相関が認められた(エラーバーは95%信頼区間)。

スタンスを判定した2者の間のカッパ係数は0.44と一致度が低かったため、2者の評価がAnti-Antiを-1、ANTI-NEUTRALを-0.5、NEUTRAL-NEUTRALを0、NEUTRAL-PRO を0.5、PRO-PROの場合を1として多変量回帰分析にて相関を求めた。

【学会発表概要
第11回日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会
発表日時:9月21日(土)17:15 – 18:15
発表者:可知 健太
題名:ソーシャルネットワークを活用した「ワクチン」関連の医療情報引用の実態調査

本調査の詳細な資料は、以下のURLよりご確認頂けます。
https://medicaljournalism.jp/download/823/

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